機能配備、その他
7つのレイヤには通信するために必要なさまざまな機能が配備されます.レイヤの位置付けを考えれば必然的にそのレイヤに配備される機能もあれば,どのレイヤに配備するかはプロトコルスタックにより異なる機能もあります.図1・17は,機能配備の代表例を示しています.例えば,経路選択の機能は必然的にネットワーク層に配備されます.送信確認をトランスポート層に配備する理由はあるのですが,そのように限らなければいけない訳ではありません.
セッション層の理解
7つのレイヤの中では,セッション層とトランスポート層の違いがわかりにくいかも知れません.セッション層のセッションは,ジャムセッション(jam session:即興演奏)のセッションと同じです.例えるなら図1・18に示すように,ライブハウスで5時から10時までを予約するのはトランスポート層の役目で,その中のジャムセッションとトークセッションというような内容の区別を行うのがセッション層ということになります.あるいはトランスポートを図1・19に示すように土管と考えてください.鮭の切身や封筒を土管に通す際,やはり区切りが入れたいのですが,この区切りはセッション層の規定になります.
身近な例
図1・20は,携帯電話とコンピュータネットワークでの,プロトコルスタックに現れる項目を示しています.メールや写真転送といった項目は,アプリケーション層に属します.電話番号は,ネットワーク層の守備範囲です.電波が良い悪いといったことは物理層の話です.
TCP/IPプロトコル群
インターネットを含むコンピュータネットワークでは,TCP/IPプロトコル群と呼ぶ一群のプロトコルを用います.TCP/IPプロトコル群では,図1・21に示すように,上位レイヤは「アプリケーション層」にまとめられています.だからといって,プレゼンテーションやセッションが無用ということではありません.通信を考える上で必要な概念であり,これらのレイヤのプロトコルが使用される例もあります.10.7.4項では「FTPではセッションをトランスポートコネクションにより代用している」と考えると整理が付きやすいことを説明します.すなわち,セッションという概念を知っていたほうがよいということです.