プロトコルスタック(アーキテクチャ)

プロトコル(通信の約束ごと)

通信は,さまざまな約束ごとにより成立します.例えば,手紙で連絡を取る(通信する)場合,図1・11(a)に示すように,これを日本語で書くのか,はがきか封書か,運搬は鉄道かトラックか,どんな経路で届けるのかといった選択肢の,どれかに決めることによって通信が成立することがわかります.コンピュータとコンピュータとが通信をする場合も,図1・11(b)に示すように,様々な約束ごとを決めておく必要が生じます.例えば,同じ種類のケーブルを使うことを約束しておかなければ,物理的につなぐことさえできません.通信するための様々な手順を含む約束ごとのことを「プロトコル」といいます.

プロトコル:約束ごと

プロトコルスタックとは?

コンピュータ間通信の約束ごと(プロトコル)は実に多岐にわたるので,すべてのプロトコルを一括りに決めてしまうことは得策ではありません.図1・12(a)に示すように,ケーブルの形と使用する文字の種類の話とが,同じルールブックに載っているようでは整理がつかないわけです. そのため図1・12(b)に示すように,プロトコルは階層に分けて,すなわち地層を重ねるようにして上下に何段かに分けて規定します.上の方が人間に近い約束ごと,下の方が機械に近い約束ごとを規定するようにします.このようにすれば,ケーブルの形のような機械に近い約束ごとは下の階層で,使用する文字の種類のような人に近い約束ごとは上の階層で規定することになり,見通しがよくなります.また,階層ごとに約束する事柄が別になっているので,階層ごとに約束ごとの変更や差し替えが可能となります.すなわち,ケーブルの形が違うだけなら,すべての階層の約束ごとを変更する必要はなく,機械に近い約束ごとだけを取り替えればよいことになります.

このように,階層を積み重ねたプロトコル群のことをプロトコルスタック(またはアーキテクチャ)といいます.

プロトコルスタック

OSI基本参照モデルの位置づけ

階層の分け方,プロトコルの規定の仕方については,OSI(Open Systems Interconnection)基本参照モデルという基準が,国際標準化機構ISO(International Organization for Standardization)により定められています.図1・13に,OSI基本参照モデルの階層を示します.このモデルを基準にして実際のプロトコルを規定すれば,そのプロトコルがどのような位置付け(階層)のものであるかについて,共通理解が得られる訳です.OSI基本参照モデルは7つの階層に分かれており,それぞれ図中に示すような名前が付いています.各階層のことをレイヤ(Layer:層)と呼びます.例えば,ネットワーク層を「第3層」というように,各レイヤは下位から上位への番号により呼ばれる時もあります.

OSI基本参照モデル

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2009年3月31日更新